泰利学舎国語講師がオススメする日本文学②

読書力は国語力。もうすぐ夏休みですね。夏休みこそ、たくさんの本を読みましょう。
今回は、中学・高校の入試によく取り上げられる作家の小説を紹介します。
入試の小説問題で問われるのは、主人公を中心とした登場人物の心情の変化です。
あるできごとをきっかけに、主人公の気持ちが変わり、そのことが心の成長につながっていきます。その変化を的確にとらえ、出題者の意図に沿った記述ができるかどうかが入試では問われるのです。
心情の描写にすぐれた小説をたくさん読むことで、記述に必要な語彙力、表現力が身に付いていきます。
それでは、小説の紹介をしていきましょう。

サクラ咲く

「サクラ咲く」 辻村深月 (光文社文庫)

辻村深月は、若い世代に圧倒的な支持を得ている女性作家です。
2012年に「鍵のない夢を見る」で直木賞を受賞したほかにも、多くの文学賞を受賞しています。
「サクラ咲く」には三編の小説が収められています。
表題作の「サクラ咲く」は本好きな中学1年生塚原マチが主人公。
ある日、図書館で本をめくっていると一枚の便せんが落ちます。
そこには『サクラチル』という文字が書かれていました。
顔の見えない相手との便せん越しの交流が、二人の距離を近づけていきます。登場人物の心の動きが生き生きとていねいに表現されていて、文章も読みやすく、読書が苦手な人にもおすすめの一冊です。

 

あと少し、もう少し

「あと少し、もう少し」 瀬尾まいこ (新潮文庫)

瀬尾まいこの作品は、高校入試の国語で小説の問題にしばしば取り上げられていて、この小説も複数の県で出題されています。「あと少し、もう少し」は中学校の駅伝大会を描いた小説です。
陸上部の名物顧問が異動となり、頼りない美術教師が代わりにやってきます。
部長の桝井は、中学最後の駅伝大会に向けてメンバーを集め、寄せ集めの6人によって県大会出場を目指し、練習が始まります。
個性的なメンバーたちは、ときにはぶつかり合いながら、駅伝の練習を通して成長していきます。
小説は、1区から6区までのそれぞれの走者が語り手となって進んでいきます。感動で涙があふれてくる青春小説です。

 

よろこびの歌

「よろこびの歌」 宮下奈都 (実業之日本社文庫)

宮下奈都の小説は、2018年度の群馬県公立高校入試で出題されています。
映画化もされた「羊と鋼の森」で本屋大賞を受賞し、人気作家となりました。
「よろこびの歌」は、有名なバイオリニストの娘で、声楽を志す主人公が音大附属高校の受験に失敗し、新設された女子高の普通科に進むという物語です。
彼女は、挫折感から同級生との交わりを拒み、母親へのコンプレックスからも抜け出すことができません。
しかし、校内合唱コンクールの指揮を担当したことをきっかけに、心に変化が生まれます。
合唱を通して、さまざまな悩みを抱える少女たちの心の成長を主人公やクラスメイトの視点で描いた短編集です。

 

しずかな日々

「しずかな日々」 椰月美智子 (講談社文庫)

椰月美智子の小説は、中学入試でよく出題されています。
「しずかな日々」は、野間児童文芸賞、坪田譲治文学賞をダブル受賞した小説で、クラスでも目立たない小学5年生の男の子が主人公です。
母親とアパートで二人暮らしをしている主人公は、母親の転職にともなって、転校するように言われますが、友達と別れたくないため、転校をせずに、母親の父である祖父と二人で暮らすことになります。
主人公の「ぼく」の目線で、祖父や友達と過ごす夏休みが描かれます。特別な事件が起こるわけではないが、かけがえのない日々。
主人公「えだいち」の心の成長を、みずみずしい文章とともに味わってみてください。

 

小学五年生

「小学五年生」 重松清 (新潮文庫)

重松清の小説も中学入試でよく見かけます。
「小学五年生」は、17編のショートストーリーで、主人公はすべて小学五年生の少年です。
クラスメイトの突然の転校、近しい人との死別、見知らぬ大人や、転校先での出会い、異性へ寄せるほのかな恋心、ケンカと友情など、まだ「おとな」ではないけれど、もう「子ども」でもない少年たちの心の成長が描かれています。
一編が原稿用紙15枚程度と短いながらも、人物描写や情景の描かれ方の完成度の高さが評判を呼んだ作品です。
重松清には、この小説以外にもすぐれた作品がたくさんあります。
読み始めたら止まらない重松ワールドを体験してみてください。

 
以上、入試によく出題される作家の5作品を紹介しました。
どの小説も主人公だけでなく周りの登場人物のキャラクターが魅力的で、心情も繊細に描かれていて、読みごたえのある作品ばかりです。

最後に、言うまでもないことですが、読書は国語力を上げるためだけにするものではありません。
思春期の読書は、豊かな人間性を育むための基盤でもあります。
この夏、たくさんの本を読み、読書のおもしろさ、楽しさを存分に味わってください。

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